いきなりだが、
私は自称“軽度の男性恐怖症”である。
友達に「なんで?」「きっかけとかあったの?」と聞かれて考えてみた。
「中高とも女子校で男子に対する耐性がつかなかった」
というのは原因の一つに違いない。
しかし、よくよく思い返してみれば、男性恐怖症というか男子苦手かもと思ったのは中学入学後が最初ではない。
では、いつ?と考えた。
そう、小学校5年生くらいのときのキックベースだ。
最近はコロナ事情とかいろいろで小学校の様子も変わっているかもしれないが、
私の時には昼休みや放課後は校庭が解放され、自由に遊ぶことができた。
小学校時代、
家に帰ってから遊ぶ友達といえば、クラスの仲のいい女子か近所の仲のいい女子ということが多かったが、
学校で遊ぶときには、基本クラス単位で男子女子関係なく集まっていた。
学校でできる遊びというと、外遊びになり、
だいたいドッジボールとか、長縄とか、各種鬼ごっこ、ドロケイ、タンタ(ご当地系ボール遊び?)とかをすることになる。
校庭のある程度広い場所を確保できた時には題名にあるキックベースをすることがあった。
広い場所をとれることは結構レアで多くても年に3回くらいである。
初めてキックベースをして遊んだ時のことである。
キックベースは野球のルールが基本になっているのだが、当時の私は野球についてまるで興味がなく、もちろんルールもほとんどわかっていなかった。
ピッチャーが投げて、バッターが打って、どうにかすると点が入って、どうにかするとアウトになる。
そのくらいの理解であった。
キックベースが始まり、攻撃の回から始まった。
サッカーは苦手であったが、ころころと自分に向かって転がってくるボールを蹴るくらいはできたし、場所が悪くても勢いよく飛んでいけばなんとなく格好がつく。
攻撃は問題なく終え、なんならちょっといい感じのキックができて得点に貢献したので、「お、やるな」くらいに思われていたかもしれない。
事件(大げさ)は守備の回になったときに起こった。
野球で言えば、内野あたりの守備をしていた。
「どうか私の方に飛んでこないでくれ」
と願ったが、こういうことは願えば願うほど、悪い方に行くものだ。
内野ゴロ的なボールが私の方に飛んできた。
ゴロなのでもちろんキャッチは簡単にできた。
そして、「なんかこのキャッチしたボールをどこかに投げなきゃなんだよな~」と思い、周りを見回したところ、2塁の子と目が合ったので、その子に向かって送球した。
見事2塁の子のほうに正確に飛んでいった。
「よし、これでひとまずおっけー」
とほっとしたその時、
「どこ投げてんだよ!」
「そっちじゃねーよ」
という声が聞こえた。
私「(え、なになに)」
と小さくパニックに。
「2塁じゃなくて1塁だろ~」
私「(2塁とか1塁とかなんなの?ていうか、私怒られてる?)」
と一瞬のうちにぐるぐると考え、
とっさの判断で
「でへへ、ごめんごめーん」
とへらへら謝ってみた。
それ以上に責められた記憶もないので、そのやりとりはそこで終わったのだと思う。
その瞬間はへらへらして気にしてないフリをしていたが、結構ショックで心臓がバクバクしていた。
今にも泣きそうだった。
結局そのあと泣いたのだが。
もうちょっと詳しく説明しておこう。
野球のルールを知ってから、この事件を思い返すと、
他のランナーは出塁しておらず、今蹴った子をアウトにする必要があったという状況であり、
ゴロだったのでそのキッカーは1塁に向かっている途中だったのだろう。
だから当然守備側としては1塁に送球するべきであり、ちょっとでも野球のルールを知っていれば常識の範疇の判断である。
しかし、そのときの私は何もわかっていなかった。
「(早くこのボールを自分の手から離して責任転嫁したい!)」という一心でたまたま目が合った子にパスしたのだ。
しかし、セオリーから考えてみれば私の判断は完全にミスであり、相手の得点につながってしまいかねないものだったので、私に文句を言った男子の気持ちも当然わかる。
子どもは遊びでも勝負事であれば、まず勝ちたいと思うことは当然であり、負けるかもしれない要因を作った子に対して何か言いたくなるだろう。
しかも、何も意地悪で言ったのではないし、多分その子は私が傷つくかもしれないなどということは1ミリも思っていないだろう。
でもその時の私はこの上なくやりきれない気持ちになったのである。
「(細かいルールなんて教えてもらってないし!)」
「(そんな風に言わなくてもいいじゃん!!)」
という反発心が大きくなってしまった。
もうその後のことはよく覚えていないが、その守備の回が終わって、
隅っこで休んで(控えて)いた時、
猛烈に悲しくなってきて泣いた。
え?泣くほど?
と思われるかもしれない。
でも、そのころから人前で泣かないことをポリシーとしていたのにもかかわらず泣けてきたのだ。
私は昔から怒られることが何よりも大大大嫌いだ。
それに負けず嫌いでプライドが高い。
おまけにしっかりものキャラで頼られることが多いタイプだった。
なのに、遊びの場でこんなふうにみんなに聞こえるように、
怒られるなんて!!!
言われた時にはへらへらしたふりを
悔しい気持ちで涙が出たのと、
友達が慰めてくれて余計恥ずかしかったのと、
男子こわい…という気持ちと、
いろいろな気持ちが湧き起こっていた。
そして、この先の私の人生に
「軽度の男性恐怖症」
という形で影響を与えたのだ。
そう言うと大げさだが、確かにこの出来事が物心ついてから初めてのきっかけである。
その男子のことを恨む気持ちはまったくないし、なんなら逆にいい人だとも思っている。
その男子にマイナスの感情を抱いたのはこの時くらいで、逆に優しくしてもらった記憶もある。
しかし、トラウマなんだな。
共学の中学校に行っていれば、
いい思い出に書き換えられた可能性もある。
しかし、この
男子こわい…苦手かも…
という思いが濃いまま中高と女子だけに囲まれて育ってしまったために、
男子への印象が変わらないままとなってしまった。
この男子(男性)への拒否感は心の中だけで渦巻いているものであり、表面には出さないようにしている。
周りの人から特に指摘されたこともないので、対外的にはうまく立ち回れているのだと思う。
しかもさすがにもうこの歳なので、男子苦手…とかぶりぶりしたことは言っていられない。
実際、職場などではストレスを感じるまでもなく、普通に男性ともコミュニケーションがとれる。
ただ、30すぎたのにちゃんと人を好きになったことがないのとか、
結婚はしたい気がするけど「ただいま~」って帰って人がいたらいやだなと考えてしまうのは、
この出来事も少なからず原因になっているのでは?と思わずにはいられない。
※ただの言い訳、責任転嫁、被害妄想では?ということは言わないでおく。
では。