小学生のころの話である。
小学校時代は遅くても3時過ぎには学校が終わり、まっすぐ家に帰ればまだ4時前である。
そこから夕食の7時ころまでのフリータイム。
宿題をやってもせいぜい30分くらいで終わってしまうので、やっぱり暇である。
すると、友達と遊んだりするわけである。
その当時は当然スマホなどはないので、やってもテレビゲーム。
しかし、テレビゲームも毎日やっていては飽きてしまうので、外で遊ぶ。
海が近かったので石投げに興じてみたり、禁止されてはいたがテトラポット探検をしてみたり。
また、当時の移動手段と言えば徒歩か自転車が主流だったが、
ある時は一輪車、
ある時はローラーブレード、
ある時はキックボード、
ある時はローラー付きスニーカー、
と、流行りが移り変わり、いろいろなもので移動していた。
それに乗ったり、走ったりすること自体を遊びとして楽しんでもいた。
そのなかで記憶に残っているのが、ローラーブレードで駄菓子屋に行った時のことである。
結構練習して危なげなくローラーブレードを履きこなして(乗りこなして?)いたときだった。
いつもは歩きか自転車で向かうが、せっかくできるようになったローラーブレードを移動手段として使ってみたかった。
(「カードキャプターさくらへのあこがれ」と言えばわかっていただけるだろうか)
意気揚々を家を出て、5分もかからないところにある駄菓子屋に到着した。
そのまま店内に入ろうとしたところ、店主のおばあさんから、
「それ危ないから店入らないでくれる?」
と言われたのだ。
「(え?どゆこと?)」
「(危なくないし。)」
「(客だし!)」
と思っておそらく困り顔で立ち尽くしていたのだろう。
見かねたおばあさんが、
「それ脱いで入りな」と言ってきた。
「(え?脱ぐ?)」
「(つまり土間みたいな店の床を靴下で歩けと?)」
と一瞬考えたが、せっかくここまできたのにお菓子を買わずに帰ることはできない!と思い、結局ローラーブレードを脱いで店内に入ることにした。
無事200円分くらいのお菓子を買い、また、ローラーブレードを履き直して、家に帰ったのだった。
その時は友達も一緒だった。
帰り道その友達と、ちょっと愚痴りながら帰った記憶がある。
「まじあの言い方むかついたよね~」
「別に危なくないよね!」
「転んだりとかもしないし」
といった感じである。
子供心に、「自分のローラーブレードの実力を否定された」ように感じ、それと、単に注意を受けたことに対して反発したくなったということなのだろう。
そのときの気持ちは理解できる。
ただ、最近自分も思うのだ。
スケボーのようでスケボーじゃない何かに乗っている子やローラー付きスニーカー(や自転車でさえも)に乗っている子供を見ると。
「危なっ」「うわ、こけそう…」
と。
30年生きてきた経験から感覚が変わったのか。
車を運転するようになり、自分が加害者になる可能性があるという意識が植え付けられたからか。
自分も小さいころにやっていたようなことでも、今の大人になった自分が、同じようなことをしている子供を見るとひやひやする。
あのときの駄菓子屋のおばあさんも、
ローラーブレードのまま狭い店内に入ったら、
この子はバランスを崩して大胆に転び、
お菓子がぶちまけられたり、
ガラス製の商品棚が割れたり、
けがをしたり、
というビジョンしか見えなかったことであろう。
今なら理解できる。
そんな昔の記憶から、
子供が見ている世界、大人が見ている世界、それぞれの感じ方は大きく異なるのだなと思った次第である。
しかも、子供は大人目線で考えることはできないし、大人も子供心を忘れていたら子供の気持ちもわからないだろう。
そうして、そこに反発や摩擦が生まれるのかなとも思った。
30歳になった今、精神的にはしっかりと成熟していきつつも、子供の頃の感じ方を忘れずにいたいものである。