読んだきっかけ
凪良ゆうさんのことは『流浪の月』で本屋大賞を受賞されてから知った新参者ですが、受賞作品が気に入ったのでその後『神様のビオトープ』と『私の美しい庭』を読みました。
今回少し遅れてですが、凪良さんの最新作品ということ&表紙&題名に惹かれて読んでみました。
そもそもシャングリラとは…
歌の題名などで聞いたことはありましたが意味をきちんとは知りませんでした(無知さが露呈(^^;))ので、調べてみたところ、
シャングリラとは:
「桃源郷」や 「理想郷」 という意味の言葉。
もともとはイギリス人作家の小説「失われた地平線」に登場した架空の楽園の名前。
あらすじ
本の帯の文言を以下に引用します。
通販サイトのあらすじも同じような感じです。
明日死ねたら
楽なのにと夢見ていた。
なのに最期の最期になって、
もう少し生きてみても
よかったと思っている。
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」
学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、
恋人から逃げ出した静香。そして――
荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、
いまわのきわまでに見つけられるのか。
圧巻のラストに息を呑む。
滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
感想
以下私の感想です。
※決定的なネタバレはしていませんが、少しでもストーリーを知りたくないという方は本を読まれてから、これより先を読んでいただけると幸いですm(__)m
この本を読んで…
「一ヶ月後に地球が滅びる」と言われたら自分はどうするだろうか、と考えずにはいられない。
この本の中で、
一ヶ月後に地球が滅びるということを知った人間たちの社会は、どんどん壊れていく。
横行する略奪、強盗殺人、自殺。
それらの出来事をだんだんと何とも思わなくなっていく人間たち。
どこもかしこも無法地帯と化し、人間としての良心や尊厳を失っていく。
自分と自分の大切な人さえよければいい。
他の人もやっているからいい。
生きるためなのだから仕方がない。
どうせあと一ヶ月でみんな死ぬのだし。
そんなふうに自分を納得させ、ある意味洗脳し、
悪事に手を染めてしまったり諦めてしまったりする。
無法地帯と化したその世界では悪事とされることがもはや悪事でないのかもしれないし、諦めるほかない状況なのかもしれないが。
すべて本の中で起こっていることである。
現実には一ヶ月後に地球が滅亡するなんてありえない。
と頭ではわかっているつもりだが、
本の中の出来事が妙にリアルに感じられた。
今、新型コロナウイルスで侵されているのは、
私たち人間の身体の健康だけでなく、
むしろ良識や良心なのではないか。
危機に迫られると人間は理性を失う。
もしくは、汚い部分が露呈する。
マスクを買い占めてみたり、
トイレットペーパーや保存食を買い占めてみたり、
供給が完全にストップするわけではないから買い占めはやめてください、と言われてもなお、自分と自分の家族のために買い占める。
また、正義を振りかざして、自粛警察やマスク警察が出現する。
ちょっと考えればやりすぎだとわかることなのに。
今のコロナに汚染されたこの世界と、『滅びの前のシャングリラ』の世界には共通するところがあると感じた。
最近では世界的にワクチン接種が始まり、終わりが見えないながらも少しの希望が持てるようになったため、今以上に悪い状況になることはないかもしれない。
しかし、この本の中の世界は人間がどれだけがんばってもどうしようもない状況である。
行く先に待っているのは“確実な死”でしかない。
絶望するしかない状況である。
そんな中で、主人公たちは強く生き、本当の幸せをみつけていく。
人を愛する気持ちを初めて知ったり、思い出したり、
そして、守るべき人のために戦ったり、
死ぬとわかっているのに、生きよう、生かそう
できる限りしあわせに、
自分ができることはすべてしよう、
そんな強い思いを感じた。
「明日世界が滅亡する」と言われた方が心静かに終わりを迎えられるかもしれない。
しかし、ここでは「一か月後」だ。
想像してみても、恐怖であり、苦痛であり、
そんな苦しい思いをするなら死にたいと思ってしまう気もする。
でも想像は想像の域を超えない。
現実世界では地球滅亡でなくても、
絶望的な状況というのは生きていれば訪れる。
もうすべてが嫌だ。
生きている意味なんてないんじゃないか。
もう終わりにしてしまいたい。
そんなときに自分はどう行動するか。
この本を思い出して考えたい。
どんなに先が暗くて未来が見えないときでも、やれることはあるんだなと思った。
硬い感じで綴ってきたが、
ものすごく簡単に感想を述べるとすれば、
おもしろかった。
です。
では。