私は母が29歳のときに生まれた子供で、第一子である。
これは保育園に通っていた時の記憶である。
保育園でお迎えを待っているくらいの時間帯のこと、
「お母さん何歳?」という話題が盛り上がっていたようで、
「うちは○○歳!」「うちは××歳!」と勝手に発表し合っていた。
もちろん、私もその流れに乗って発表した。
「うちのお母さんは24歳だよ!」
周りにいた子供たちの反応はあまり覚えていないが、
ある先生は「えーー?」と疑ったような声を出していた。
「ほんとだもん!お母さんに何歳か聞いたら24歳って言ってたもん!」と思いつつ(言葉に出して反論していたかもしれないが)、
「あれ?私お母さんにウソつかれてる?」何かを察していた気もする。
その日お迎えに来たお母さんに、「何歳?」と聞いてみたところ、
笑いながら「24歳だって言ってるじゃーん」と返された。
その時も近くにいた先生は笑っていた。
いくら保育園児とはいえ、空気を読む力はそこそこあったようで。
私の疑念は膨らんでいき、
家に帰ってから、「本当は何歳?」としつこく聞いていたら、
「もお~うるさいな~33歳だよ」
とようやく本当のことを白状したのだった。
白状されたらされたで、十の位が3であったことに衝撃を受けた。そんなに歳だったのか!と。
まあ当時の母と同じくらいの年齢になった今の私にまだ子供はいないので、たいそう失礼な話ではあるが。
もっとよく考えてみれば、うそをつかれた年齢の中で一番若かったのが「19歳」であったと記憶している。
子供心にもさすがに「19歳はありえないでしょ~」と思っていたのでだまされなかったが、そのジャブがあってからの「24歳」だったので、つい、だまされてしまったのだろう。
私が母の年齢になぜこんなに執着したかというと、
保育園で先生に笑われたことで私のプライドが傷ついたからだと思う。
だまされていた上に、そのことで笑われて悔しかったんだろうなと推測される。
笑った先生たちも悪意は1%もなかっただろう。
「あらあら、だまされちゃって」と微笑ましく見ていただけだということは理解しているし、今となっては自分ももう大人側の人間なので、共感もできる。
ただ、その時、4歳か5歳の私としては、許せないことだったんだなと思う。
小さい子って単純で愛おしいなと、自分で自分に対して思ったのでした。
私も自分の子供ができたら、一旦25歳とでも言っておこう。