ちょっと前の記事で人を好きになったことはないと書いたが、
「初恋は?」と聞かれたら、ぎりぎり思い浮かべる人がいる。
では、人を好きになったことがないというのは嘘ではないかと思うかもしれないが、
その初恋と言うのが小学生時代のことだからだ。
小学生という時期は6年間もあり、身体的にも精神的にも大きく成長する時期であるが、そうは言ってもまだまだ子供である。
男子女子の関係の感覚としても、“男と女”というより“同じ人間!みんな仲良し!”みたいな感じである。
誰が誰と付き合った別れたという話がないでもなかったし、生理が始まったりして“男と女”感はゼロではなかった。
でもなんとなく、この淡い恋心は“初恋”としてはノーカンにしている(笑)
小学校から高校にかけてどの時期においても“席替え”は一種の心躍るイベントである。
席替えのくじを引いて一斉に移動し、隣の席や周りの席の子たちをみて一喜一憂するという経験は誰しもあるだろう。
印象に残っている席替えは小学6年生最後の席替えである。
担任の先生がユニークな人で、最後だからより一層のイベント感を持たせようと思ったのだろう。
いつもは番号を書いた紙をくじにして引くという形式であったが、この最後の席替えでは一味違ったやり方であった。
ちょっとしたアンケートのような紙が渡され、
そこには、
*近くの席になりたい人
男子( ) 女子( )
*近くの席になりたくない人
( )
というような質問が書かれていた。
もしかしたら( )は一つずつではなかったかもしれないし、特にいなかったら書かなくてもよいという風になっていた気もする。
近くの席になりたくない人という直接的な表現でもなかっただろうが、ニュアンスしか記憶にないのでご勘弁を。
担任の先生は最後の席替えなのでなるべく希望を叶えようとしてくれたのだと思う。
おぼろげながらも覚えているのは、
近くの席になりたい女子は迷いなくすぐに書いた。
3人くらい書いたような気もする。
それから、近くの席になりたくない人というのは、
そこまで絶対に嫌!という子はクラスにいなかったものの、結構すぐにキレてしまう子がいたので、ちょっと申し訳ないなと思いつつも書いておいた。
問題は、近くの席になりたい男子である。
書くならこの子かなという候補は最初から頭の中に浮かんでいた。
しかし、書くまでに無駄にいろいろと考えた。
「(ここに書いたらその子のことを気になってるって先生にばれるの恥ずかしいな。)」
「(席替えした後近くの席になったということはどっちかしらが書いたということで、それがわかってしまって、いろいろ噂されたりするの嫌だな。)」
「(その子は私なんかより隣になりたい女の子がいるだろうに、私が書いたことでそれが叶わなくなったら迷惑かけるよな。)」
「(私の隣になって残念がられたらつらいな。)」
「(単純に自分の気持ちに正直になるのが照れるな。)」
とかなんとか。
小学6年生のちょっとませてきた年ごろの頭をフル回転させて、書こうかどうしようかを迷いに迷った。
とりあえず書かないでおいて、周りがどんな感じで書いてるかなと、全神経を研ぎ澄ませていた。
結構みんなもこそこそしていて、ためらいがちに書いていたような気がする。
だいたいみんなが書き終わったころ、先生が「じゃあいいかな?集めるぞ~」と言い出した。
「(え~どうしよう、書く?書かない?え~どうしよう!)」
「(最後だしな~、どうせみんなと別の中学に行くしな~…)」
「(こういうときに勇気を出せる人間にならねば!)」(←)
と、ぎりぎりまでダメ押しで迷った挙句、「えい!ままよ!」的なノリで、頭に浮かんでいたその子の名前を書いたのだった。
もちろん自分の希望が全部通るわけではないし、先生もそのように断りを入れていた。
しかし、蓋を開けてみたら、見事自分の希望は通っていた。
私はどちらかというと小学生にしては大人っぽい感じで、いつも俯瞰してみているみたいなところがあり、自分の言いたいことやりたいことを我慢して周りに合わせるということが多かった。
先生も、そんな私のスタンスに気づいていたのだろう。
だからか、この子がここに書いてきたなら!と張り切って私の希望を優先してくれたような気がする。
その男の子が他の子に指名されなかっただけという可能性もあるが。
そして、いよいよその席に移動。
希望した人と近い席になっているというのがわかっている状況では、なんだか恥ずかしいというか、照れるというか、一種の気まずさがあるというか、何とも言えない空気が流れていた。
私は隣になった男の子に何か言う前に、近くの席になって同じ班になれた女の子と大げさに喜んではしゃいでる風にしてみせた。
(もちろん照れ隠し)
そのあと、隣の男子が「よおっ」とかなんとか言ってきたので、何でもない感じを装って、適当な感じで返事をした。
(もちろん照れ隠し)
そのころから私のアマノジャク気質って始まっていたのね。
初日こそそんなぎこちなさがあったが、この席は小学校生活の中で最高の席だった。
仲良しの女の子が近いのも最高だったし、初恋まがいの気持ちを抱きながらその男子とふざけ合うのも楽しかった。
今では席替えのやり方ひとつとっても一歩間違うとモンスターペアレンツから何か言われてしまうかもしれない。
この担任の先生のやり方も今考えてみればちょっと危険な気もする。
しかし持っていき方や、おさめ方がうまかったのか、ほぼ全員が最後の席で楽しくやっているように見えた。
そんな小学校の思い出。
ちなみに、この小学校は公立で中学受験などをしなければそのままみんな同じ中学校に上がるのであるが、私は中高一貫の学校を受けたため、この学区メンバーで勉強するのは最後になった。
転校とか引っ越しする子にあげるノリで卒業の時にクラスの子たちからメッセージをもらった。
その初恋(?)の男子からは、なかなかうれしい言葉が書いてあった。
なんて書いてあったかというと…
うん、
なんて書いてあったか思い出せない☆(←)
多分5年前くらいまでは記憶していた気がするのだが……
ああ、私の記憶力。
「最後の席なかなか楽しかったぜ」的なことだったか?
私に好意がある?というか同じ水準で楽しめる同士として思ってくれているようなメッセージだった気がする。
ああ、ここに書こうと思ってはじめてメッセージの内容を忘れてしまったことがわかる。
なんという皮肉。
書き進めてくる間も、まさか忘れてしまったとは思いもよらなかった。
全然いい感じに締まらなくなってしまった。
ということで、甘酸っぱい?青春よりももうちょっとみるい小学生のころの思い出でした。