ふと思い出したので。
題名からすると、
「頼んでもないのに親が張り切って大学の卒業式に来てしまった。」
というニュアンスに聞こえるであろうが、
違う。
間違いなく私が、「卒業式きて」と頼んだのだ。
ある日、ゼミで担当教授と他愛のない話をしていた。
(※私の所属していたゼミは基本的に教授と私の2人というゆるいゼミだった。)
どんな流れでその話になったかわからないが、卒業式に着る振袖やら袴やらのことを話していた。
私は大学の部活で茶道をやっていたこともあって和装が好きだった。
しかも、卒業式であるから華やかでかわいい着物を着る大義名分がある。
卒業式のかなり前から、店舗に行って試着したり、ネットでレンタル袴を調べたりして、卒業式の晴れ着をようやく決めたころだったような気もする。
「自分がこのように着飾るのも、大学の卒業式と(叶えば)結婚式くらいだろうな…」
「自分の気に入った着物と袴だから、みんなに自慢したいし見てほしいな…」
(※決して目立ちたがりなのではない。)
特に親には、「ほら、かわいいでしょ?」と言っても引かれないし、
これまでの感謝を伝える意味も込めて(後付け感が否めないが)、
とにかく、「自分の晴れ着姿をみてほしい。」
という気持ちがあった。
しかし、そんな気持ちに蓋をして特に親に卒業式のことを話さないままに日々がすぎていた。
そんなとき、ゼミで卒業式の話になって、話の流れで
「うちの親は来ないんですよ~」
というようなことを言った。
自分としては何の気なしに言ったつもりだったが、寂しさが漂っていたのだろう。
教授(韓国の方で日本語ぺらぺらだがときどきなまる)が
「お前はお父さんとお母さんに来てほしいんじゃな?」
「だったら、素直に『来て』って言えばいいんじゃな。」
と言った。
そう言われて私は
「そうか、私は親に卒業式にきてほしかったんだ」
と気づいたのだった。
そして、数日後に親に電話をし、
卒業式の翌日に控えた引っ越しの手伝いのお願いをするのにかこつけて、
「できれば、卒業式もきてほしいな~
写真館も予約してあるし、友達の親も来るらしいよ」
となんともかわいくない言い方で、「卒業式に着てほしい」ことを伝えたのであった。
卒業式の日は平日だったが、両親の仕事柄その時期は融通がききやすかったこともあり、休みを取って卒業式に来てくれた。
そして、引っ越しも父親の車で無事完了させた。
「言葉にしなきゃわからない」
「言葉にしなきゃ伝わらない」
とは聞き飽きた言葉であるが、
「本当にその通りだ。」
とこの経験で思ったのだった。
つい、
「言わなくてもわかるよね」とか、
「言ったら迷惑がられるかな」とか、
「ん~、まあ言わなくてもいっか」とか、
「またあとで言おう」とか、
ついつい、「言葉で伝える」ことを怠ってしまうことがある。
もちろん、以心伝心で伝わっていることがないとは言わない。
しかし、親友、恋人、さらには家族など付き合いが長かったり深かったりする仲でも、本当の気持ちは分かり合えていないことが多い。
あとから、「実はあのときこう思ってたんだよね」とか言われて驚くこともある。
その人を傷つける言葉(その人のためになることであっても)である場合は、言うか言わないか、タイミングはいつにすべきかを慎重に考えるべきであると思うが、
そうでないことは、
「なるべくはやく、言葉にして伝える」
ということが大事だな、と思ったのだった。
ただ、思っても実際に行動に移すのは難しいもので、大学時代にこんな教訓を実体験から得た今でも、
言わずにいて、あとから、「あのとき言っとけばよかった…」
と後悔することは少なくないのだが。