何年か前、母と韓国旅行に行ったときのことである。
夜ご飯を食べ終え、せっかくだからカフェでも行こうかということになり、私が留学時代通っていたカフェへ。
ワッフルが有名なカジュアルおしゃれな感じのカフェである。
学生街にあるためか勉強や作業をする人のためのおしゃべり禁止のエリアが設けられている。
私たちが行ったときにはおしゃべりOKの1階フロアは埋まっていたが、寒い時期ということもあり他を探すのもウェイティングするのも億劫だったので、2階のおしゃべり禁止エリアに座ることにした。
先にオーダー&会計だったのだが、その際店員さんに、
「上の階はお話できませんが大丈夫ですか?」と釘を刺された(この日本人たちちゃんとわかってんのかな?という確認もあっただろうが)ので、
「大丈夫です」と答えたものの、なんだかんだひそひそ声でだったらしゃべってもいいんじゃないかと高を括っていた。
いざ、2階の席へ。
シーーーーーーーーーーーーーン……
めっちゃ静か。
息をするのもためらわれるほどの静かさだ。
ちなみに2人掛けの席が8席くらいあって満席だ。
私と母、カップル一組以外はお一人様である。
一人で勉強や作業に来ている人が静かなのは当たり前であろう。
しかし、カップルもきちんとおしゃべり禁止を守っているのである。
私と母はワッフルと飲みものの感想や明日どこ行く?という話を限りなく小さい声で、時には読唇術も駆使しながら(←)試みてみた。
しかし、
「ここおしゃべり禁止エリアなんですが?」
「うるさいんですが?」
という周囲の無言の圧力に耐えられなくなり(多分被害妄想)、
会話することを諦めざるを得なかった。
黙ってワッフルを食べ、飲みものを飲むというのは手持ち無沙汰なことこの上ないので、カップルを観察することにした。
というよりも嫌でも目に入ってきたという方が正しい。
何もしゃべらないで退屈じゃないのかな?と思ってみてみると、、
彼らはなんと視線で会話していたのだ。
じっと見つめ合って、微笑み合って、愛嬌振りまきあって、
過剰すぎないスキンシップを飽きもせず続けている。
軽いキスくらいはしていたかもしれない。
感服した。
恋は盲目……二人の世界……
などとはよく言ったもので、周りにどう見られるとかそういうことは彼らの頭の中には一切ないようで、「自分たちが楽しくて幸せならいいんだ!」という静かな迫力を湛えていた。
恐れ入った。
「何イチャイチャしてんだよ」と思わせない、あの誰のどんな感情も入り込む隙のない二人の世界。
なぜこんなことを思い出したかというと、彼氏ができた私はカップルの“生産性が1ミリもないイチャイチャタイム”にうんざりし始めているからだ。
休日の朝、「今日何する?」「眠いね~」「ご飯何食べる~?」などと真剣に考える気も決める気もないやり取りをしながら、何となくつけてみたたいして興味もないテレビ番組を見ながらイチャイチャぐだぐだする時間が私にとって少々苦痛なのだ。
”少々”と本当はつけたくないが彼氏がかわいそう&嫌なやつになりたくない自己保身のためにつけておく。
まあ「100%いやだ!」「こんな時間1秒もいらない!」とまでは思わない。
ただ、耐えられてMAX10分である。
これって付き合ってまだそんな経ってない(4か月くらい…はまだ短い方だよね?)からペタペタしたいのか…もともとスキンシップの時間を長くとりたいタイプなのか…。
後者だったら付き合い続けることを考えなければならないと思うほどである。
と、結局愚痴になってしまった。
失礼。
自分と彼氏のことについていろいろ考えるうちに、韓国のあのカップルのことをふと思い出して敬服の気持ちを覚えたよ、という話でした。
ああいう無駄な時間が楽しいというのはこれ以上ない幸せなんだナ。
でも自分はその価値観は受け入れられそうにないナ。
恋愛リアリティショーの番組などを見ていても、視線を交わし合って駆け引きしたり、気持ちを伝えようとしたり、相手の興味をひいてみようとしたり、
恋愛上級者さんたちには到底及ばないのは当たり前なので自分も同じようにしてみようとはもちろん思わないが、
「私だけを見て」「ほら楽しいね」みたいな行動を恥ずかしいと思わずできてしまう自分に対する”自信”は少しだけ私も欲しいと思う。